ドキュメンタリー「ICTサマーウォーズ 2015」 (後編)


前編に引き続き第4回ICTトラブルシューティングコンテスト(トラコン4)、2日目の様子です。デットヒートを繰り広げるトップのWCDIと2位のコバゼミ。そこに思わぬ伏兵が現れます。(若干の潤色はありますが、ほぼ事実に基づいております。)

2015年8月30日(日曜日) トラコン4 二日目

07:00 : 初日より1時間早くコンテストが開始されるため、運営の学生集合時間も昨日より1時間早く繰り上げられた。二日目ということもあり、運営学生にも若干の余裕が感じられる。

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08:30 : 参加選手の受付がはじまる。初日と同じく、受付開始直後から参加選手が会場入りしてきた。

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09:00 : 二日目午前の問題が出題された。以下の3問である。

Q8. 経路情報が来ていない。

Q9. Redmineがアクセスできない!?

Q10. 同期できません!

Q8は明らかにネットワークの障害であることが推測できる。Q9もRedmineサーバのセキュリティ的不具合だ。Q10は問題タイトルからは想像できないが、ファイルサーバであるGlusterFSとSamba間でデータに食い違いが生じるというトラブルである。ネットワーク、セキュリティ、サーバインフラといったカテゴリをバランスよく織り交ぜている。初日のトップ2チームがここでも高得点をあげていたが、WCDIを追いかけるコバゼミがわずかに多くポイントを獲得し、昨日の差が縮まってきた。

12:00 : 午前の問題が終了し、参加選手たちはB1のカフェテリアへと昼食に向かう。運営学生は午後問題の準備に取り掛かると同時に午前問題の採点と集計作業を行っていた。すると集計担当の運営学生がある異変に気づく。午前問題の採点結果、現在トップのWCDIでも2位のコバゼミでもないチームが最も高い獲得ポイントを示している。そのチームとは、

ベトナムハノイ工科大学チーム「BKAlternative」だった。

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初日の結果BKAlternativeはトップWCDIに対し18ポイントの差があり、総合順位としては同率で5位につけていたため、運営学生も特にマークはしていなかった。が、なんと二日目の午前問題終了時点で総合3位にジャンプアップしていた。2位コバゼミとの差は11ポイントである。二日目午後の問題は全て10ポイント問題であるため、少なくともコバゼミと順位が逆転する可能性は十分にある。運営の学生数人がNOC内を見回しコンテスト実行委員会役員の姿を探した。運よく、NOC入り口のそばの椅子に座り、運営の学生と談笑していた会長を見つけ、会長にこう聞いた。

「伊勢さん、ダブル受賞はOKですか?」

困惑した、そしてなぜか嬉しそうな学生の表情を見て、伊勢は即座に状況を察し、こう答えた。

「大丈夫だ、問題ない」 (ふ、ふるい・・・)

今回の大会では始めてThe Showdown in Japan(以下TSJ)プロジェクトを導入していた。TSJとは海外に拠点を持ち、現地の学生を新卒社員として採用している協賛企業が、関係の深い現地大学の学生をこのコンテストに招聘し、世界各地の情報系学生達による競争と交流を通じて国際的に相互切磋琢磨してもらう事を目的としたプロジェクトだ。今大会ではクリエーションラインがカンボジア・プチサストラ大学から、オルトプラスがベトナム・ハノイ工科大学からそれぞれチームを招聘し2チームのTSJ枠参加があった。今回の表彰では優秀、最優秀賞のほかにTSJ賞を用意し、これらTSJ枠参加のチームの中で最も高得点を獲得したチームに送られる事になっている。つまりカンボジアかベトナムのどちらかのチームがTSJ賞を受賞する事になる。もし、この2チームのうち、どちらかが、優秀、最優秀賞を受賞すると、TSJ賞とのダブル受賞となるわけだ。

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13:00 : 二日目午後、最後のコンテストフェーズの開始である。まずは3問のうち以下の2問が出題された。

Q11. 公開鍵認証でsshができません・・・・

Q12. Proxy再構築

Q11はネットワークセキュリティ問題。そしてQ12はProxyサーバの性能問題に見せかけたネットワーク障害問題である。特にQ12は当該サーバだけではなく、ネットワーク全体の性能に影響が出ているため、平行して他の問題を解こうとしてもレスポンスが遅く、どのチームも苦労していたようだ。

13:30 : ここで、本コンテストの最終問題、いうなればラスボス問題が出題された。

Q13. 犯行予告が来ました。

この問題では各チームが所有するWebサーバを乗っ取るという声明がredmineのチケットとして送りつけられ、犯行予告から数十分後、実際にWebサーバが乗っ取られる。参加選手はその原因を突き止め乗っ取られたWebサーバを取り戻すというミッションである。この最終問題は運営学生が企画し、基本部分を作成した後、実行委員(社会人サポータ)である川畑と黒崎が味付けし仕上げたラスボスである。

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しかし、ここに運営学生の辛辣かつ綿密に組まれた罠があった。Webサーバの乗っ取り手法としては、サーバをクラックしてアカウントを奪い、コンテンツを差し替えるというのではなく、ネットワークの構成情報を改ざんして同じURLに対し、全く別のサーバへとアクセスを誘導するのである。したがって、各チームのバックボーンネットワーク自体が侵食されているため、他の問題に対しても影響が発生する。出題されてから数十分後に乗っ取りを開始するという理由は、それまでに先の二問を解決するか、もしくは解決のメドをつけておく必要がある。しかも先の2問のうち、Q12もネットワークの障害問題であるから、少なくともQ13の乗っ取りが実施される前にQ12を解いておく必要がある。しばらくして幾つかのチームからQ11の回答が提出されてきた。WCDIはここでも満点。コバゼミも満点を出して差を開かせない。そしてBKAlternativeも満点である。トップ3チームの差は縮まりも開きもしない。

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14:30 : Q13による乗っ取りが開始されてから十数分後。まだどのチームからもQ12とQ13の回答が報告されていない。最終フェーズの問題は少し意地悪すぎたか?といった反省とも、やったぜ感とも取れる言葉がNOC内で聞こえた。二日目午後の問題の回答期限は15:30、残り1時間である。運営学生は固唾を呑んでスコアボードを見つめている。そんなNOCの静寂の中、Q13の採点を担当している川畑が突然奇声を発した!

「ひぅげあぁぁぇぇーー!最終問題、ベトナムチームが満点出しやがった!」

NOC内がどよめく。

「まじかーぁぁ」 「ひぃぃぃー」 「うぇえええー」 「げぇぇぇー」

トップWCDIとBKAlternativeの差がいきなり5ポイントに縮まる。BKAlternativeは残すところあとQ12のみ。WCDIとコバゼミはQ12とQ13が残っている。こうなって来ると、残りの問題次第ではもうどのチームが優勝してもおかしくない!

運営学生達、なぜか異常な盛り上がりを見せる。

15:30 : 二日目午後の問題が終了した。参加選手たちは協賛セッションと表彰式の会場である1Fのロビーへと移動を開始する。運営の学生達は最終的な採点の集計を行った。

結果は劇的だった。

WCDIはQ12、Q13をノーポイントで終了したが、コバゼミは4ポイントを加え得点数としてはWCDIと同点となり、同率首位に躍り出た。BKAlternativeは残念ながらQ12をノーポイントで終了し、トップとの5ポイント差を縮めることができず、3位で本コンテストを終えた。

結果的に獲得点としては同率首位となったWCDIとコバゼミであるが、本コンテストでは第1回から優秀、最優秀の同率首位を認めず、得点数が同じ場合でも順位を決めるためのタイブレークシステムを用意していた。つまり得点以外の要素(詳細は割愛するが、過去のコンテストでは回答時間、回答内容の正確性、満点の数、平均獲得ポイント数、ノーポイントの数など各回によって異なる)により、最終的にはWCDIが1位で最優秀賞、コバゼミは惜しくも2位で優秀賞を受賞する事になった。

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そして当然の事ながらBKAlternativeはTSJ賞を受賞した。後で彼らに話を聞いてみたところ、メンバーの中にCisco NetRidersという全世界的な学生ネットワーク技術コンテストのベトナムチャンピオンがいるということだ。どうりでコバゼミ以外どのチームもゼロポイントだった最終問題で満点を叩き出すわけだ。そして、自分達がわずか5ポイントの差で総合3位であったことを知り、次回も必ず参加し、そして必ず優勝すると宣言した。今回、初日午前をノーポイントで終了してしまった原因としては、コンテストの勝手がわからず、また言葉の問題も大きかった事だろう。次回、再び挑戦するならば、これらのハンディキャップをなんらかの形でクリアし、万全の状態で望んでくるはずだ。

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そうなると次回ベトナムチームが優勝する可能性は非常に高い。

それを迎え撃つ日本の学生達。日本を発祥とし、日本のお家芸(?)であるこのコンテストのトップを死守できるのか?勝てるのか?大丈夫か?

学生 「大丈夫だ、問題ない」

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